たすけて!田中くん
「凪沙ちゃん、こいつの彼女になってくれてありがと〜」
そう声をかけてきたのは、オレンジ色の髪の男子。この男のせいで、私の苦労が始まったのだ。
彼のことを睨みつけてから、口調を強めにして発する。
「その件ですけど、お断りします」
今初めて顔を合わせた男の彼女になることを喜んで許可する人がいるはずない。
「ま、断っても、噂流しちゃったから遅いんだけどね〜」
だいたい予想はついていたけれど、余計なことをしたこの男に対して腹が立ってくる。
「そもそも、なんで私なんですか?」
意味がわからない。誰でも良かったなら、他を当たってほしい。
人気があるらしいし、喜ぶ女子たち達がたくさんいるはずだ。
「強そうな女の方が良いからだ」
当然のことのように敦士が言い放つ。
さっきの感じだと今ここで私を喜久本凪沙って認識した感じだったはずだ。その理由はおかしい。
それに私がどんな人間だったかはここにいる人たちは知らないはず。
そのため、私は一芝居うってみることにした。
「……私、か弱い普通の女子高生なので強くないです」
俯いて手の指を組みながら、弱いアピールをしてみる。
私は非力であなた方のなんの役にも立てませんオーラを出して、諦めてもらいたい。
必死に抵抗する言葉を考えていると、私の背後のドアが開く音がした。