たすけて!田中くん
一章 敦士の彼女
「見て、あの子だって敦士さんの……」
「意外! 百瀬みたいなぶりっ子系かと思ったけど……なんかガサツそうじゃない?」
「わかる〜。自分のことサバサバ系とか思ってそう」
「しかもさ、感じ悪いよねぇ」
人の悪口は大抵どんな相手に対しても、どうとでも言えるものだと思う。
たとえば、人気者に地味な子が近づけば、釣り合わないと陰で叩き、女の子らしい子が近づけば、色目使っただとか男って馬鹿だとか言う。
そして、私の場合はガサツな自称サバサバ系らしい。
ってな感じで、都合のいいように悪口言われ放題だ。
「そこんとこ、どう思う? 田中くん」
「いや、俺に聞かれても」
隣の席の田中くんは相変わらず、そっけない。
私のこと見えてる?
せめてこっち見て話してほしいんだけど。いやでも、無視されないだけマシだ。
「私はただ平穏に過ごしたいのに」
ふぅっとわざとらしく悩ましげなため息を吐いてみる。すると、田中くんもため息を吐いた。
「そんなこと言われても、俺は知らないし」
「今日は冷たいね」
「これが普通だけど」
隣の席の田中くんは黒髪に縁なし眼鏡をかけていて、真面目を絵に描いたような真面目。
そして、冷たくて素っ気ない。
だけど、そんな彼を私は唯一の友達だと思っている。