たすけて!田中くん
番外編
1
高校一年の春。クラスで一人だけ浮いている人がいた。
誰とも話さずに席でじっとしている彼女の表情は少し強張って見える。
休んでいたから輪に入れなかったのかもしれない。
偶然にも彼女とは隣の席で、なんとなく視界に入ってしまう。
隣の席としての義務を果たすべきだろうか。
「休んでた分のノート、写す?」
ノートも誰も貸してくれないだろう。
迷惑がられるかもしれないとも思ったけど、彼女が休んでいた分のノートを貸した。
すると、表情が明るくなり嬉しそうに笑った。
「ありがとう!」
人懐っこい笑顔でお礼を言われて、一瞬思考が停止する。