たすけて!田中くん


「あと百瀬さん、自分のゴミはきちんと捨てて」

「茅織って呼んでほしいなっ!」

「はいはい、茅織ちゃん。いいから捨ててきて」

百瀬さんの下の名前を呼ぶと表情が明るくなり、自身が食べ散らかした袋にまとめてゴミ箱に捨てにいく。

それに付き添うサトシは、まるで忠犬のようだった。


「茅織と仲良くやれそうだな」

敦士が腕を組んで偉そうに言ってくる。先ほどからただ私たちの会話を聞いて眺めているだけの彼は、暇なのだろうか。

「誰のせいでこんなことになってると思ってるんですか」

「俺が巻き込んだせいだな」

「そもそも、私を巻き込む必要がどこにあるのかわからないです」

不満を漏らすと、悪びれもなく口元を歪めた。


「お前は俺の彼女だろ?」

まるで極悪人のような表情で、そんな言葉を言われても、まったくきゅんとこない。おそらくは巻き込んだ理由を教える気はないのだろう。


「違います」

「でもそういうことになってんだぞ」

「私のこと好きでもないのに、彼女っておかしくないですか?」

百瀬さんがいるじゃないか。〝彼女〟という存在が必要なのなら、この子でいいはずだ。百瀬さんは彼らの大事な存在なのは確実だというのに、関係性がまだ不透明だった。


視線が交わり、数秒間無言が流れる。


「俺はお前のこと、好きだけど」

低い声で私に向かって囁いてきた。




< 28 / 232 >

この作品をシェア

pagetop