たすけて!田中くん
スマホを見ると、もうじき五時になるところだった。
この人たちは、放課後いつもここで日が落ちるまで過ごしているのだろうか。そろそろ弟が帰ってくるから帰りたい。
「あの、私もう帰っていいですか?」
「あらら〜、敦士振られちゃったね」
鞄を持って立ち上がると、ゆた先輩も立ち上がった。
まさか彼も一緒に帰る気なのかと、ぎょっとしてしまう。
「んじゃあ、俺が送っていくね〜」
「結構です」
「女の子をひとりで帰らせるのはダメだよ! せめて駅まで送らせて?」
「……後ろについてくるだけなら」
隣を歩くのなんて嫌だ。この人は外見が目立ちすぎる。
「はーい! ついていきます〜」
おかしそうに笑いながら私の後ろをくっついてくるゆた先輩に、頭が痛くなってくる。ここの人たちの中だと、この人が一番苦手だ。
「それと」
ドアの前で立ち止まり、振り返る。
「私、落ちませんよ」
不敵に微笑んでみると、敦士の眉がぴくりと釣り上がった。
「なんで言いきれる?」
馬鹿げた質問にため息が漏れそうになる。むしろ何故そこまで自信満々なのだと聞きたいくらいだ。
「この状況で、それ聞きます?」
こんなふうに強引に巻き込まれて脅されて、好きになるなんておかしな話だ。
「では、さようなら」