たすけて!田中くん


ちょっとだけ嫌味を込めてにっこりと微笑む。そしてさらりと風に流れる長い髪をおさえて、耳にかける。


ゆた先輩は無言で私を見下ろしていて、反応がない。



「きっといますよ、どこかに」

無責任なことを口にしてしまった。

だけど、この人のことがとても寂しい人のように思えてしまったのだ。私は占い師でもなんでもないから、本当にいるかなんてわかんないのに。


呆けているゆた先輩を置き去りにして、歩き出す。



「あの、歩かないなら置いていっていいですか」

一旦振り返り、首を傾げるとゆた先輩は不服そうな表情で私を見つめていた。



「……やっぱり、君のこと苦手だ」

「あはは、私もです」

ついてくるんだか、ついてこないんだか知らないけれど、私は帰りたいから先を進む。

今まで関わる人は少なくて気楽だったのに、最近はこの人たちのせいで毎日が疲れる。早くこんな日々から解放されたい。




< 33 / 232 >

この作品をシェア

pagetop