たすけて!田中くん
「嫌な夢だった……」
「いや、現実だから。逃げんな」
「はぁああ……なんなの。私がなにしたって言うの」
「日頃の行いのせいじゃない」
確かに昔は男の子と喧嘩ばかりしていて気が強かった。
取っ組み合いをして泣かせてしまうことも日常茶飯事。
生傷ばかり作っていて、近つくのは危険だと認識されていたほどだ。
親や姉弟には、これ以上暴れないでくれと真剣に何度も説教されて、今はすっかりおとなしくなった。
高校ではお淑やかに過ごす予定が、こんな意味のわからないことに巻き込まれてしまい、正直困惑している。
「そいつと付き合うわけ?」
「付き合う気なんてないよ。ああいう人たち苦手だし」
「でも、向こうは勝手に彼女だって言いふらしてるけど」
「最悪だ。訴えてやる」
なんて言ったところで、そんなのが通じる連中じゃないのだろう。
常識的な相手だったら、こんなことになっていないはずだ。