たすけて!田中くん


「その喜久本の彼氏とやらはどんなやつなの」

「それが見た目はわからないんだけど、〝敦士〟って名前らしい」

「……へえ」

私に付き合えって言ってきた人にもう一度会って、付き合う気はないとはっきり言いたいけれど、名前もクラスもわからない。


「呑気なこと言ってるけど、危ないんじゃない?」

「危ないって?」

「彼女ってなると嫌がらせとか。女子から人気あるみたいだし」

勝手に言いふらされているだけとはいえ、今日一日でわかったのは〝敦士〟はモテるらしいということ。
朝聞こえてきた噂によると、結構な数の女子たちを振っているんだとか。

田中くんの言う通り、不本意だけど女子から妬まれそうだ。

それはそれで面倒だけど、女子にちょっと嫌がらせされたところで平気だし、変な男に絡まれても対処できる自信がある。


「そこら辺の男よりは私強いし、なんとかなるよ」

昔から腕っ節もわりと強いので、その点では心配はしていない。自分の身は自分で守るつもりだ。




< 5 / 232 >

この作品をシェア

pagetop