たすけて!田中くん

「死ぬは大袈裟すぎだけど。なんつーか……お前だって一応女なんだし、防犯ブザーとか常に持ち歩けよ。自分の身を守れるようにな」

「そこは困ったことがあれば俺を呼べじゃないんだね」

「俺がそんな言葉をお前に言うはずないだろ。そんな男に見えるか?」

なんて男だ。真顔で答えるところが憎たらしい。期待はしていなかったけれど、面と向かって言われると腹立たしい。

こんなやつが敦士と同じグループにいるなんて、信じられない。敦士は喧嘩に強いと言われているけれど、彼も周りもそうだという話を聞いた。


けどサトシって本当に喧嘩強いのだろうか。昔は私に泣かされていたので、強い想像がつかない。


「まあ、とりあえず負けんなよ」

「いや、なにに!」

「じゃーな」

なんの為に話しかけてきたのかよくわからないまま、言いたいことだけ言ってサトシは去っていく。

だんだんと距離ができていく後ろ姿を眺めながら、ため息を吐く。


早く解放されたい。そのためにはどうするべきなのだろう。



< 57 / 232 >

この作品をシェア

pagetop