皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 その天の声が再び、ミレーヌに助言をしたのは十三歳になろうとする年だった。
 普段は何気ない話をしてくれる天の声。何をしなさい、これをしなさい、ということはあまり言わない。
 だけど、そのときだけは違った。

 ――ミレーヌ。魔導科に進学しては絶対にダメ。必ず騎士科へ進学するのよ。

(どうして?)と、ミレーヌは心の中で尋ねる。こんなことを天の声が言うのが珍しかったから。

 ――王族の婚約者は魔導科からって決まっているでしょ? あなたが魔導科に進学したら、何をしても、どうあがいても、あなたが第一皇子の婚約者に選ばれてしまうのよ。だから、最初から候補から外れる道を選択しなさい。

(わざと魔法が下手な振りをすればいいんじゃないの? 優秀な人しか選ばれないのでしょ?)
 ミレーヌは思った。思うことでその声が天の声に通じる。

 ――それでもダメなのよ。あなたが魔導科に進学する限り、何をしても婚約者になってしまうの。

 それはミレーヌにとって、衝撃的な内容だった。これがミレーヌでない女性であれば喜んだかもしれない。だって、何をしてもあの第一皇子の婚約者になることができるのだから。

< 10 / 125 >

この作品をシェア

pagetop