皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 一応、とつけてルネは答える。男性に間違えられること、女性かと確認されるようなことは、何も今に始まったことではない。

「そうか、では下に戻るとするか」

「はい」
 ルネは自力で立ち上がり、エドガーの後ろを付いていく。
 本来であれば、エドガーが手を差し伸べて彼女を立たせるところなのだろうが、他人に興味のないエドガーがそのような行為を行うするはずもない。ただ、この相手がミレーヌだったのであれば、別な形になったのかもしれない。

 エドガーとルネが下に行くと、そこにはミレーヌしかいなかった。
「シャノンは、お兄様が医務室に連れていきました。ちょっと、気持ちが落ち着いていないみたいなので」

「ミレーヌ、ありがとう。シャノンが助かったのも、君のおかげだよ」
 そう言ったルネはまた、ミレーヌに抱きついた。

「もう、ルネったら。落ち着いて」

 どうどう、と暴れる馬をなだめるかのように、そのルネの背中を優しく撫でているミレーヌ。

 なんか、見たことある光景だな、とエドガーは思う。ああ、あの時の、といつか前に目撃してしまった状況を思い出した。なんだ、と彼は一人、鼻で笑う。つまりあのときの相手は、彼女の数少ないこの友達だった、というわけか。
 エドガーにとっては、喉につかえていた何かがすっと流れていくような感覚。

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