皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「お兄様、次の方の治療にいきましょう」

 回復魔法が使えると知ったミレーヌはやる気満々だ。

「そうだな。副隊長、次のテントに案内してくれ」

「いや、私が同行しよう」
 起き上がったエドガーは、そのベッドからおりようとしている。

「ケガ人は寝ていろよ」

 それはマーティンの本心なのか、それとも可愛い妹と他の男が一緒にいるのを、面白くないと思っているのか。

「おかげさまで怪我は治った。そして、これから治療する怪我人は私の部下たちだ。だから私が案内しよう」
 エドガーはベッドからおり、血の染みた包帯を外す。それを黙って手伝うのがマーティン。なんだかんだで、仲が良いんじゃないの、この二人。とミレーヌは思う。

「お兄様。私、すごくないですか?」

 実際、エドガーが動けるようになったことで全身の怪我の回復具合はわかっていたのだが、包帯を外したことで、よりその回復具合が目に見てわかる。

「さすがミレーヌだ」とマーティンは喜んで、ミレーヌの頭を撫でる。
 そして頭を撫でられたミレーヌは嬉しそうに目を細めた。仲の良い兄妹に見える。いや、本当に仲は良い。

 そんな兄妹のやり取りをエドガーは眩しそうに見つめていた。むしろ、ミレーヌの方を。

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