皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 だが、回復魔法をかけたのは、騎士見習いの妹だという。騎士見習いのくせに回復魔法を、だと?

 礼を言うためにその名を呼ぶと、マーティンの身体の後ろにすっぽりと隠れていた少女が、顔をのぞかせた。
 第一印象は、マーティンと似ていない、と思った。
 礼を言うと、当たり前のこと、と言って微笑んでいた。
 こういうところはマーティンに似ていなくもないけれど。ただ、彼女のその一言が、心をあたたかくするのは何故だろう、と思った。

 死にたくなる感情から救い出してくれた彼女。初めて湧く感情に戸惑いを感じる。と共に、この少女にちょっと興味が湧いた。
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