皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
「そんなの休暇明けでいいだろ。見てみろよ、第五なんて来てないじゃないか」
 ロビーが顎でさしたのは、マーティンの席。その机の上はもちろんきれいに片付けられていた。

「あの男と一緒にするな」
 やはり顔をあげることなく、ふん、と彼は鼻で息を吐いた。

「いいよなぁ、第三と第五はよ」
 と、ロビーは自分の席の椅子の背もたれを抱く形で座った。そしてうらやましそうに、エドガーを見ている。エドガーとしてはじーっと見られている形になるので、少々気持ち悪いのだが、そちらに視線を向けるようなことはしない。ロビーと目が合ってしまったら負けのような気がするからだ。

「何が、だ?」
 やはり報告書に視線を落としたまま尋ねた。

「だってよ。今回の休暇と建国祭の時期がまるまるっと重なってるんだぜ。こんなおいしい話があるかよ」

「祭り、行きたいのか?」
 やっと報告書から目をあげたエドガーはロビーに視線を向けた。

「そりゃ、行きたいだろ。俺にはかわいい嫁さんがいるんだから」
 そうだった。ロビーは既婚者であった。

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