年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
と言い出すやつもいる。ゴルフは男の無駄に高いプライドやセコさが分かるスポーツでもある。同じところからまわって勝てば、もう何も言われない。・・・ただし、ラウンドにも誘われなくなるが。
 カートに乗って、ボールが落ちたところまで行く。
「金城さーん、調子悪そうですね~、大丈夫ですかー?」
 私は金城の脇を肘でつつきながら煽る。だいたいメンタルの弱いやつはこういう文句にも弱いのだ。
「おまえ、上手ではないとかよく言ったな」
「えー! そんなー! ぜんぜん上手レベルじゃないですよー! まさか金城さんがこの程度・・・あっ、ごめんなさい。なんでもないです」
「おいコラ、調子のんなよ」
 私はこらえきれずげらげらと笑った。金城も苦笑いをしている。
「お二人、仲いいですねえ~」
とキャディーさんがカートを運転しながら言う。
「どこが!!」
 きれいにハモってまた爆笑した。久しぶりにめちゃくちゃ楽しい。やっぱり勝ち負けがあるスポーツは面白いし、金城も最初はなんだこいつと思ったけれど、逆にまったく気を使わなくていいから気楽だった。
 金城はバンカーで三回も叩き、このホールはぼろぼろだ。
 次はショートホール。バーディーのチャンスである。私がユーティリティーで素振りをしていると、
「ジンはいつ帰ってくんの?」
と金城がたずねてきた。どきりと心臓がはねる。
「さあ。一週間くらいシンガポールに行くって聞いてるけど」
 何食わぬ顔で私は素振りを続ける。
「ふうん・・・でも八神桃花がこっちくるってことは会う約束とかしてると思うんだけどなあ」
 顔を見るとにやにやしている。こいつ・・・私に揺さぶりをかけはじめた。お生憎様。私もさんざんラウンドしてきてこういう駆け引きは経験数多なの。私はティーにボールを乗せると深呼吸した。
 キィーン!!
 ユーティリティーは芯を外し、グリーンを囲っていた池に飲み込まれていった。
「あっ」
 私は愕然とした。まさかショートホールでこんなミスをするなんて。
「あら、珍しいですね。ドンマイです」
 キャディーさんの慰めとは裏腹に満面の笑みを浮かべて
「残念だったな~、やっぱりめちゃめちゃジンのこと意識してんじゃない」
と金城が言ってくる。
「へ~、こういう手を使わなきゃいけないほど追いつめられてるってことかあ、案外だっさいね、金城さんは」
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