年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
 ダメだ・・・。Tシャツ一枚ではふくらみはもちろんのこと突起まではっきり出てしまう。私はラウンド中に着ていたポロシャツをTシャツの上から着た。気休め程度だが、ないよりマシだ。さらに、バッグを胸の前で抱え不自然にならないように隠し、そろそろと更衣室を出た。ちょうど会計の客で混雑している。私は最後尾に身を縮めて並んだ。
「早えーな。ここは俺が払うから、カード出せ」
 後ろから声をかけられてびくりと体がはねる。
「いや・・・ごめん、ちょっと待ってくれる?」
「は? 何で」
「盗難にあって・・・」
「はあ? 盗難!? まじかよ、何盗まれた、金か?」
「いや、いいから・・・」
「いいからってよくねーだろ」
「財布か? あ、クレカだけ盗まれたとか? 俺も一緒にもっかい探してやるよ。 ほら、バッグ貸せ」
 金城がバッグに手を伸ばす
「いいっていいって」
「そうか」
 諦めてくれた、とほっとしたその時
「なーんてなっ」
と、私のゆるんだ腕の中からバッグをかすめとった。
「油断大敵~、それでもボディガードかよ」
 したり顔で金城が言う。私は金城のわき腹めがけて思い切り蹴りを入れ、バッグを取り返した。
「ぅぐっっ」
 金城が脇を押さえてよろめく。「何すんだよ!」
「こっちの台詞よ、私が盗まれたのはブラジャーなの!!」
 思わず大声を出してしまってからハッとする。館内にいた人たちの視線を一気に集めてしまった。
「お、お次でお待ちのお客様・・・」
 私は駆け足でフロント行った。

「ったく、それならそうと最初から言えよなあ~」
 金城がタクシーに乗り込みながら言う。
「盗まれたものが盗まれたんだから言いたくなかったの」
 あれから警察がきて、長いこと私たちは拘束され、やっと解放されたのだ。ゴルフ場のショップで厚手のパーカーを金城に買ってもらい、今はそれを着ている。
「結局自分から大声で『ブラジャー!!』って叫んでたじゃん」
「うっ・・・それはつい・・・」
「どちらまで行かれますか?」
 タクシーの運転手が訪ねる。
「えーっと」
「パラディースリゾートホテルまでお願いします」
「は? なんでだよ」
「だって着替えたいし」
「あ、じゃあ、ショッピングモールまでお願いしまーす」
「ちょっと」
「こっちは腹減ってんだよ。モールで買えばいいだろ」
「ええ・・・それはちょっと・・・」
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