年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
 その後、嵐は一軒の民家に私を連れてきた。門にはシーサーがニ体設置され、オレンジ色の瓦屋根が、いかにも沖縄の家という印象だ。
「ここは?」
「ぼくの家」
「えっ、意外」
 嵐はマンションの上層階とか、一軒家にしてももっと現代的なモダンハウスに住んでいると思っていたからだ。中に入ると木と畳のにおいが鼻についた。
「なんか懐かしいにおいだね」
「そうなんだよ、分かる?」
 先に入っていた嵐が嬉しそうに振り返る。ぱあっと記憶がよみがえってきた。嵐の家で、あおいちゃんと三人でカルピスを飲んだとき、確かにそこは畳だった。
「嵐の昔のおうちも、こんな感じだったよね」
「そうそう、もともとばあちゃんちに住んでたから古い家だったんだよ。でもそれがなんか妙に落ち着くんだよね」
 嵐たちがいなくなって数ヶ月後には取り壊せれたから外観までははっきり覚えていない。古かったと言われたらそうかもしれないけど、記憶は其れ以上戻ってこなかった。
「親父が亡くなって、一人暮らしするってなったとき、マンションも含めていろいろ物件見たんだけど、ここが一番しっくりきたんだよね」
「えっ、お父さん、お亡くなりになったの?」
 あおいちゃんからお母さんはいなくなったと聞いていたけど、まさかお父さんまでお亡くなりになってるとは思わず、私は驚いた。
「うん、俺が高校卒業するとき。やっと株が波に乗ってきて、これから楽させてあげられるって矢先の出来事だったから、きつかったな」
 嵐の目線の先には仏壇があった。嵐の目に似ている白髪交じりの男性の遺影が飾られいた。
「私、手をあわせてもいい?」
「ありがとう」
 私は正座して、一礼をした。置いてあるガスバーナーでろうそくに火をともすと、そこに線香の先をつけた。煙がくゆって遺影の前を通る。私は静かに手を合わせた。お父さん、私、隣に住んでいた滝田りこです。嵐の家族なります。顔あげ、ろうそくの火を消すと、おいしそうな匂いが鼻に届いた。
 振り返ると、嵐はキッチンにいて何かを作っている。立ち上がって向かおうとすると、
「あ、りこねえはそこに座って、お茶飲んでて」
とちゃぶ台を顎で指す。ちゃぶ台の上には綺麗な色のグラスに麦茶がそそがれていた。琉球グラスだ。テレビで見たことがある。私はさっき嵐にもらったシーグラスを隣に並べた。
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