年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
「私、沖縄のこと詳しくなくて。今度利用させていただきます」
「そうなんですか。どなたかのご家族でいらっしゃいますか?」
「あ・・・いえ、そういうわけではないのですが・・・」
 嵐とはまだ家族にはなっていない。私が言葉を濁すと
「そうなんですね。あの、よかったら、連絡先とか教えていただけますか?」
とスマホを出しながら言う。一瞬どうしようかという迷いはあったが、ホテルの取引先に失礼があってはいけないので、私も小さいかばんからスマホを出し、LINEを交換する。
「また、連絡します」
と大野さんはその場をあとにした。すると入れ違いで、また見知らぬ男性が声をかけてきた。
「こんにちは。レンタカー会社の比嘉と申します。よろしくお願いします」
「あっ、滝田りこと申します。すみません、名詞を持っていないくて」
 私は冷や汗をかきながら言う。
「大丈夫ですよ。素敵な方だなと思って話してみたかっただけなんです」
 比嘉さんは人なつっこそうな笑顔でそう言った。私は軽く会釈する。こういう場の社交辞令であることは重々承知しているのだ。
「もし、よかったら、今度飲みにいきませんか?」
「えっ、ああ、はあ」
 返答に困っていると、
「おい、りこ!」
と聞き覚えのある声が耳に届いた。振り返ると金城がいた。なぜかすごくほっとしている自分がいる。
「すみません、これで・・・」
 私は断りを入れると、金城に駆け寄った。
「ゴウさん、来てたんだ」
「今来たとこ。つーか、めちゃくちゃ変わってね? 一瞬分かんなかったし」
 言われて気恥ずかしくなる。初対面の人は過去の私を知らないからどんな格好をしていても平常でいられるのだが、知っている人から見たら今の私の姿は滑稽だろう。
「ショートボブね、いいじゃん。あんたちっちぇから、ロングより似合うよ。でもドレスはこないだ俺が買ったやつのほうが似合ってるよ。それじゃ、谷間も見えねーじゃん」
 相変わらずずけずけ言ってくる。嵐が選んでくれたのはアメリカンスリーブのドレスで、首もとまで布でおおわれている。
「つか、何も食ってねえの? 取りに行こう」
 やっぱり知っている人がいるというだけで、心強い。私たちはドリンクを取ると乾杯した。
「てかさ、LINEなんでブロックしてんだよ。ゴルフいくって約束したろ」
「へっ、してないよ」
「しただろ、ゴルフ」
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