年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
 久しぶりの沖縄は日光が照りつけている。
「あっつ」
 二人で同時に言って、顔を見合わせて笑った。幸せだ。こんなに幸せでいいのだろうか。私たちは空港の前の横断歩道を渡り、駐車場へと向かった。確かに行くときよりも車の数が多く、空きを探してうろうろしている車がたくさんあった。
「あっ、あそこだ」
 嵐が指さした先に、車が見えた。駆け寄ろうとしたその時、ぶおんというエンジンの音がし、振り返った。軽自動車が止めていた場所から勢いよく飛び出してきた。ガガガガッと隣の車にぶつかったのだが、おかまいなしにアクセルを踏み続けている。運転席には怒りの形相をした女性がハンドルを鷲掴みにしているのが見えた。
 金城のレストランで嵐を刺そうとした女だ!! 
「りこねえ、危ないっ」
 嵐も気づいて、私たちは車と車の隙間に入った。その時、小さな男の子が飛び出してきた。
「ダメよ!!」
 母親らしき女性の声が響いた。
 栗毛の髪の毛が嵐の小さかった頃を思い出させた。その瞬間には私の体は隙間からぬけだし、男の子へと駆け寄っていた。車はもう目前だった。私は男の子をかばうように抱きしめた。
 ゴンッ
 大きな音と強い痛みが体を襲った。
「りこねえっ!!」
 嵐の声が聞こえた。私は目を開けて、男の子を確認する。男の子は私の腕の中でわあわあ泣いていた。よかった、泣けるってことは助かるよ。私は少しほっとした。そのせいか全身の力がぬけていく。
「りこねえっ、りこねえっ!!!」
 すぐ近くで呼んでいる嵐の声に、私は目を開けることが出来ず、そのまま意識を失ってしまった。

「りこねえちゃん」
 小さい嵐が私の隣にちょこんと座っている。
「なあに、嵐?」
「一年生になったら、一緒に学校行ってくれる?」
「うん、もちろん!」
「りこねえちゃん」
「なあに?」
「大きくなったら、ぼくと結婚してくれる?」
「えっ?」
「ダメ?」
 うるんだ瞳で捨てられた子犬のように見つめられたら否定なんてできるわけもない。
「うん、いいよ」
 ぱあっと顔が明るくなる。
「そしたらずっとりこねえと一緒にいられるね」
 かわいい、かわいい私の嵐・・・
「りこねえ、りこねえ」
 嵐の声がリフレインして頭の中に響く。急に目の前が真っ暗になった。あれ・・・? 嵐? 嵐はどこ・・・?

「りこねえ」

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