ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う
 嬉々として花を食べているワーウィックに触発されたのか、さっき朝食を食べたばかりのはずのリカルドは前に座っているスイレンをより抱きしめながら言った。

「そうですね……着いたら色々見て回りたいです。こんな風に旅をするのは産まれて初めてなので」

 ガヴェアでは王都でしか生活したことのなかったスイレンはこうやって彼と旅に出られることが素直に嬉しかった。彼は何日かを休みを取ってくれていると言っていたし、人化したワーウィックと三人で見知らぬ街を見て回ることが今から楽しみだ。

「ワーウィックが居れば、どこにでも行けるよ。次はどこに行きたい?」

 竜は高速飛行することも出来るからその気になれば、遠く離れた大陸に一日もかからずに辿り着くことが出来る。竜騎士の中にはそれが目的で竜と契約を結ぶ人間も居て、どこそこの国はこうだったという土産話には事欠かない。

 世界中、どこにでも飛んでいける。

「どこにでも行けると思ったら、逆に迷ってしまいますね。でも、これからいろんなところに行っていろんな事を知りたいです」
< 229 / 299 >

この作品をシェア

pagetop