ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う
「先の大戦での戦犯である竜騎士リカルド・デュマースを捕らえた! 能力封じの腕輪をつけているため、何も出来ぬ。ここに集まる民衆達よ。その怒りをこの男に存分にぶつけるが良い」

 拡声の魔法でも使っているのか、間近で鼓膜に響くその声にリカルドは眉を寄せた。

 相棒であるワーウィックの命乞いをして捕えられた時、何かすぐに腕に嵌められたと思ってはいたが、そういうことだったかとじっと民衆の集まる広場を見渡した。

 多くの人が口々に罵声を口にし、石や泥を投げつけてくる。あまり良い最期は迎えられなさそうだなとは思うが、こうなってしまっては仕方ない。周り中敵だらけの現状でも何故か心の中は凪いでいた。

 それは何かの予感なのか、人生の終わりの始まりなのか、どうにも判断がつかなかった。
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