【5/10書籍2巻3巻同時発売】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
「……敵国に捕らえられ、戦犯の俺に話しかけてくれてありがとう。あの二週間の間、早朝に現れる君だけが癒しだった。最初はスパイかもしれないと思ったが、君の懸命な言葉に……救われたよ。君の身の上は知っていたから、後で迎えに来ようと思って名前を聞いたんだが、あの花には驚いたな。もしかしたら君も捕らえられるかもしれないから、我慢出来ずに何も聞かずに連れて来てしまった……君はあの国に帰りたいか?」

 リカルドの真摯な目とその甘くも聞こえる低い声に聞き惚れていたスイレンは、1拍置いてその言葉を理解すると慌ててぶんぶんと首を振った。

 攫って欲しいと思っていたことがこんなかたちでも叶ってしまったのだ。それは、スイレンにとっては願ってもないことで。

「良かった。じゃあ、これからは一緒に暮らそう。俺はそれなりに稼いでいるから君一人養うなんてなんてことはない。あの時俺を慰めてくれたお礼代わりにこれからは不自由させない」

 リカルドの言葉は、スイレンにとっては願ってもないことだ。それでも、そんなつもりでした訳じゃないと思ってしまう。

 自分の得になるからとかお礼が欲しいからした訳じゃない。ただただ彼に会いたくて、すこしでもその声が聞ければと、それだけしか考えていなかった。

 それだけしか望んでいなかったのに。
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