ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う
 振り向きつつ、首を傾げるスイレンは可愛い。確かに容色だけを見れば元婚約者であるイジェマの方を美しいという人も居るかもしれないが、リカルドの目にはスイレンが一番可愛く見えるのだ。個人の好みの問題だからそれはしょうがないだろう。

「内緒だよ、着いたらスイレンも喜んでくれると思う」

 その言葉を聞いてやっぱりもう一度首を傾げたが、自分には到着するまで言うつもりがないというのは伝わったらしく、前を向いた。

 ワーウィックの高速飛行は自らが自慢する程だから、竜騎士団の竜の中で一番速度が速い。遠く離れた南国とは言え、すぐに着くだろう。

 高速移動が終わり、一気に周りの空気が暖かくなった。

 スイレンの上着を脱がせるのを手伝い、自分も分厚いマントを鞍に引っ掛けた。眼下に広がる南国の海は透き通るような青だ。その美しさにスイレンは喜び、ワーウィックは機嫌の良さそうな声を上げる。

 あの花畑はどこで見たんだったかな、と思いを巡らせる。その思考の邪魔をするのは、相棒であるワーウィックの声だ。

(高速移動してお腹すいた! スイレンにお花を出してって言って!)
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