ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う
 呆れたことを言い出すワーウィックの望み通りスイレンにそれを伝えると、彼女もこの南国に来てすっかり気分が上がってしまっているのか、たくさんの魔法の花を出した。

 ワーウィックはそれを喜び、キュルキュルと鳴き声を出しながら食べ始める。ぬるい風に吹かれて、その口から逃れた花々が海に向かって落ちていく。

 青に飲まれていく鮮やかな色彩を見て本当に綺麗だなとリカルドは思った。

 スイレンは自分には花魔法しか満足に使えないと卑下することもあるが、人の心を和ませ、ワーウィック達竜の心を掴むことも出来る。なんて素晴らしい魔法なんだろう。

(……リカルド……)

 喜んでその魔法の花にむしゃぶりついていたと思い込んでいたワーウィックの神妙な心の声をリカルドは不思議に思う。

(どうした? 流石に食べ過ぎたか?)

 先ほどの尋常じゃない花の量は流石に食べきれなかったかと苦笑した。その声にワーウィックは苛立ったように言葉を返す。

(違うよ! 下を見て。……来るよ)
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