きみだけのメリー・プレゼント


「あったかいよ。ありがとう美鈴、大事に使う」


 朔くんはするりと私の手を握ってそう言ってくれた。繋がれたぬくもりは夢の中で感じたのと同じ人肌で心地がよくて、その理由に目の奥がじんわりと熱くなった。


「ありがとうはほんと、こっちの台詞だよ……。今日はもう会えないって諦めてたから、来てくれてすごく嬉しかった。ごめんね、デートできなくなっちゃって」

「そんなの気にする必要なんてないよ。今は美鈴が元気になってくれたら、それで十分だから。それに美鈴が会いたいって言ってくれるなら、俺はいつでも会いに来るよ」


 そう言って朔くんは、家に来てくれるまでの経緯を説明してくれた。私から体調不良でデートを断るメッセージが送られてきて心配していたこと、その少しあとに『会いたい』と短いメッセージが入っていて、お見舞いに来てくれたこと。

 私も、なんとなく覚えている。昼に飲んだ風邪薬の副作用で眠気が襲いかかってきた頃に、なかなか朔くん送れずにいたメッセージを送ったこと。デートができなくなってしまった謝罪を伝えて、それからうつらうつらしながら、思わず本音の一言をあとから添えてしまったこと。

 そのあとに夢の中に落ちたから、『会いたい』のメッセージも会いに来てくれた朔くんもすべて夢の中の出来事のように思っていたけど、本当は全部現実だったらしい。

 思い返すとだいぶ好き勝手なことを言ってしまったけれど、それらに朔くんが返してくれた言葉たちが嬉しすぎて、申し訳ない思い以上に朔くんへの愛しさが増している。

 ……きっと、大丈夫だ。

 この人となら、離れても、どこにいても、気持ちは繋がっている。
 手が繋げない場所にいても、朔くんなら見えない絆を結んでくれている。そういう朔くんを、好きになってよかった。


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