離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます




 グランドオープンのお祝いは、三日間行われる。

 ホテルの大会場では昼夜問わず、色々な催し物が行われて、かなり賑やかだ。

 招待客、予約客、さまざまなお客様がいらっしゃる。

 私達は、そのお客様達に、ヘアメイクと衣装合わせをお手伝いする。

 チーフが言った通り、お客様はひっきりなしに訪れて、あっと言う間に時間が過ぎて行った。

「シエナ! 」

 可愛らしい声が聞こえ、顔を上げる。

「マリー!! 」

 三年前よりも背が伸びて、少しだけ、お姉さんになった、彼女はキラキラとした笑顔で、手を伸ばし、抱きついて来た。

「元気だった? ずっとメールだけだったから、会えて嬉しいわ。 今日は、腕に寄りをかけて、可愛くするからね! 」

「シエナもパーティー出る? 」

「え?! 」

 マリーの質問もだけど、もっと驚いたのは……

「マリー、日本語話せるの?! 」

「少しだけ。 シエナと話したくて、練習した」

 エヘヘッと無邪気に笑う。

 嬉しさのあまり、ジワッと目頭が熱くなる。

「素敵なサプライズ、ありがとう」

 最近ずっと離婚の事で、暗くなっていた心が、マリーの心遣いで、ホッコリっと暖かくなる。

「パーティーは、残念ながら、今回は出ないの。 みんなを綺麗にするのを手伝うわ」

 マリーの髪を梳かし、お花の刺繍が入った、薄い紫色の、プリンセスラインのドレスを着せる。

「一緒に行きたかったのに! 」

 口を尖らせ、むくれるマリーが、可愛い。

 ほらほら、行っておいで、と背中を押して、会場へ送り出した。

「楽しんで! 」









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