離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「シーちゃん、大丈夫か? 」

 チーフが頬に手を当て、顔色ヤバいぞっと心配そうに覗き込む。

「ダメ、ダメ、死ぬる…… 」

 スーハー、スーハー、何度も深呼吸するが、緊張は増すばかりだ。

 「心配するな、今日のお前は、いつもの200倍盛れてるぞ」

 そう言ってチーフはフニッっと、頬をつねる。

「ちょ、チーフ、痛い、痛い……っ! 」

「ま、楽しんでこいや! 」

 チーフのお陰で、緊張が少しだけ和らいだ。

 

「シエナ! 」

 社長がグイッっと、私の腰を引き寄せた。

「キャッ…… ッ 」

 少し強引に引き寄せられ、肩に持たれかかるような格好になる。

「行くぞ」

 (…… あれ? もしかして社長も緊張してる…… ? )

 ちょっと不機嫌そうに見えて、チラッと上目遣いで、顔を覗き見すると、社長もこちらをジッと、見つめていた。

(え? な、何?! )

 瞬間、頬が火照るのを感じ、ドキドキッと心臓が激しく波打つ。

「…… 彼と…… 付き合っているのか? 」

「…… へ? 彼とは…… ? 」

 質問の意味がわからず、キョトンッとする。

「チーフだ。 見つめ合って、頬を撫でていただろう」

「…… はあ?! み、み、見つめ合ってなんかいません! チーフとはまだ、そう言うんじゃないですからっ 」

 身体中が熱くなって、変な汗が出て来るのを自分でも感じ、慌てて否定する。

「まだ? 」

 社長の、眼鏡の奥の瞳が揺らめく。

「今後は、付き合う可能性があると言う事か? 」

 社長がズンズンッと詰め寄って来て、私は壁際まで追い詰められてしまった。

 ドンッと、私の顔の両端に両手を付き、私は社長の腕の中に閉じ込められた。

(か、か、壁ドンッ?! )

 

 


 


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