わたしのカレが愛するもの

「あ、でも……ちぃの水着姿をほかのひとに見せるのは、ちょっとイヤかも。ラッシュガードを着て、ショートパンツはいてね?」


照れくさそうに言うコウくんの様子に、ささくれだった気持ちは瞬時に癒され、抵抗する気が失せる。


(結婚式前後は、仕事を入れないように調整してもらうことになっているし。日焼け止めを塗って、ラッシュガードに丈が長めのパンツで完全防備。極力直射日光を浴びないよう気をつければ……大丈夫よね?)

「……うん」

「前に、フィールドワークで知り合った友だちがあっちにいるから、おススメのツアーとか、地元民しか知らないオススメの場所とか教えてもらえると思う」

「……じゃあ、ハワイにする」 

「あとで連絡しておくね! そうだ、フラダンスも習いたい?」


コウくんは、わたしが救いようのないくらいダンスが下手で苦手なことを知っているのに、わざと意地悪なことを言う。


「習いたくない!」


即座に断って睨むとコウくんはくすりと笑い、わたしたち以外には誰もいないというのに、なぜかちょっと辺りを見回して、傍までやってきた。

大きな手がわたしの頬に触れ、その身体を折り曲げるようにして屈み、そして……。


(キス……だよね?)


そう思って目を伏せた瞬間、オーブンレンジの「ピーッ、ピーッ」というけたたましい電子音が鳴り響いた。

コウくんは、わざとらしい咳ばらいをしてぽつりと呟く。


「……ラザニア、できたんじゃない?」

「……うん」

(もう二度とラザニアなんか作らないんだからーっ!)

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