女の恋愛図鑑
忘れたくても忘れる事が出来るはずもない感情が、心の奥で煮え立つ感じがする。
嫌だ。
もう辛いのは嫌だ。


けれどもう遅かった。あの人と重ねた瞬間始まっていたんだ。


あたしは期待して、寒さで静かな廊下にいる。

彼にもう一度出会えたら、あたしは始まる。

間も無く、彼が向こうからやってくる。
「また見てんの?」

「あの…良かったら、メアド教えて!」
彼はきょとんとして、それからニカっと笑う。
「いいよ!そっちも教えて~ていうか何ちゃん?」

「佐知。そっちは?」
「俺、雄志。」


いっそ、出会わなければ良かった恋、どうしようもない思い。
その始まり。


2月、雄志とメールして1ヶ月が経とうとしている。
女の子なら誰もがワクワクするようなバレンタインまであと2週間、あたしは雄志が甘い物が大丈夫かどうかをリサーチするのに余念が無い。

チョコがあんまり好きじゃないのは分かった。じゃあベターなのは無理ね。

キャラメルが好きとか、チーズバーガーが好きとか、回りくどい質問を繰り返して、雄志が呆れてしまってたらどうしよう…

恋とは、こういう事を言うんだろう。
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