エリート副操縦士は年下妻を過保護に愛を注ぎたい。
「……すごいすごい、飛んでる〜」
「そりゃ、飛ぶでしょ」
私たちは駅から降りて空港内に入ってからすぐにスカイデッキへと向かった。
「綺麗だねぇ……飛行機」
奈津ちゃんがそう言うと、私は頷く。本当に綺麗……前は頻繁に見られていたのに今は本当に久しぶりで嬉しくも悲しくなった。
「……柚葉? 大丈夫?」
「うん。なんか嬉しくて、奈津ちゃんありがとう」
「そんなのいいんだよ、友達なんだから。今日はたくさん見ようよ、楽しもう」
私たちは三十分くらいここで過ごし、帰ろうと座っていたベンチから立ちあがる。
すると、なんだかふわふわした感覚に陥る。体験したことのない体の変化に恐怖を覚えた。
「柚葉? 大丈夫?」
「あ、うん……へいきだよ。立ちくらみしただけ」
「でも柚葉。顔、真っ青だよ!?」
私を覗き込む彼女は、慌てて「病院! 病院に行ったほうがいいよ!」と私の体に触れてそう言った。
だけど、そうはいかない。病院なんて行く時間はないし、お金もない。
「美味しいもの食べれば良くなるから大丈夫。奢ってくれるんでしょ?」
そう奈津ちゃんにふざけたように言って「どこがいいかなー」と笑いながら独り言をこぼした。
「それなら、いいけどさぁ……せっかくだし航空のレストラン行かない?」
「でも高いんじゃないの? 私、お金ないし……」
その時、心臓がドクンと悪い音を立てた気がして胸元に手をふれる。すると、ふわふわした感じが戻ってきた感じがして「あぁ、ヤバいかも」と自分でも思った。
「柚葉っ!?」
奈津ちゃんの声が聞こえた時、私の意識はぼんやりしていて彼女の姿もぼやけ始めた。
いろんな声が混じりあっていたが、私はその声に反応することはできず意識が遠のいていった。