婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 結局横抱きされたまま、はしたないと思えるようなかっこうです。
 レイ様は気にする様子もありません。
 セバスもダンも何も言いません。エルザもレイ様に従うようです。

 これでいいのでしょうか?

 侍女とともにやってきたエルザが靴を脱がせると室内履きを履かせてくれました。
 足に解放感が広がりました。気持ちいいです。室内履きには不満はないのですが、問題はレイ様です。

「エルザ、先ほどの答えを聞きたいのですが」

 そうです。
 室内履きで事をうやむやにしてはいけません。
 ここはエルザにびしっと言ってもらいたいです。
 
「そうでしたね。靴がどうしても気になり、そちらを優先してしまいました。申し訳ありません」

 まずエルザが礼を取り謝ります。

「わたしは長い間レイニー殿下の侍女をしておりますが、わがままな態度や礼節に欠けたふるまいなど見たこともありません。先ほどダンも言いましたが、これはプライベートでの行為だと思われますので、フローラ様には心を広くお持ちになってお許しいただければと思います」

 エルザが慈愛の籠った笑みを浮かべて、さらに深く礼を取りました。
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