婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 そういえばテーブルクロスがかけられているのも初めてではないかしら?

 しかもフリルで縁どられた花柄のかわいらしいもの。
 丸みを帯びた食器もとてもエレガントです。花瓶には気品ある白百合が生けてあり、香りがほんのりと空気に溶け込んでいるよう。

 素っ気ない無機質なムードが一変して、今日は優美で優雅な部屋へと様変わりしていました。

 私のためなのかしら? と一瞬思ったのですが、これも客人に合わせ食事の形式に合わせたものだと思い直しました。
 臨機応変って大事なことですものね。とても、勉強になります。

「リッキーの外国語の教師に抜擢されたんだって? 大変だったんじゃない? 大丈夫だった?」

 冷めないうちにとスープを口にしていると、レイ様が心配げに聞いてきました。

「抜擢というか、そんな大層なものではなくて、代わりの先生が見つかるまでの臨時ですよ」

「それでも、人に教えることができるのはすごいことだよ」

「そうでしょうか?」

「そうだよ。サンフレア語は難しいからね。教えてくれって言われたら躊躇しちゃうもんな。俺だったら、断るかも」

 なんて、おっしゃってますけど。きっと謙遜でしょう。


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