エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

七階にある脳神経外科の医局の並びに、雅史の居室はある。
外来診療は週に三日間のみ。それ以外は手術やカンファレンス、外部とのやり取りや論文作成など、この部屋でさまざまな業務をこなしている。

黒でシックにまとめられたその隅には楓の事務机も置かれ、患者のデータ管理はもちろん、国内外から送られてくるメールのやり取りや文献の整理も彼女の仕事である。


「海老沢さん」


カンファレンスを終えて部屋に入るなり、先に戻っていた彼が呼びかけてくる。


「コーヒーですね。すぐにお淹れします」


ピンときたため続きを聞かずに返すと、雅史は「悪いね」とわずかに目を細めた。

カンファレンスを終えた後、雅史は必ずと言っていいほどコーヒーを飲みたがる。それもとびきり濃くて苦い一杯を。一度試しに飲んでみたら、甘党の楓にはとても口にできる代物ではなかった。

医局の隣にある給湯室に設置されたコーヒーメーカーで淹れ、すぐに部屋に戻る。
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