エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

午後八時。ほぼ予定通りに手術は終わった。
「素晴らしい執刀だった」と口々に言う医師たちを見送り、楓が中央モニター室をあとにしようとしたときだった。


「海老沢さん」


掛けられた声に振り返ると、そこには院長の慎一がいた。


「お、お疲れ様です」


雅史が楓とのことを慎一に報告したのは昨日。なにを言われずとも恐れ多さに腰が引ける。


「少しお時間はありますか」


疑問形で聞いている割には有無をいわせない強引さがある。もちろん楓も拒否するつもりはないが。


「はい」


芹菜に「先に仕事をあがってください」と伝え、踵を返した慎一のあとを追いかける。

おそらく院長室へ行くのだろうという予想通り、彼は自室のドアを開けて楓を中に誘った。
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