エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

驚いて息をのんだ楓と対照的に、田所は眉のひとつも動かさない。反射的に閉じてもおかしくない瞼もしっかり開いていた。


「お、お疲れ様です。神楽先生でしたらアメリカに出張ですが……」
「もちろん存じています。海老沢さんに院長からのご伝言をお届けにきただけです」
「……院長から?」


彼から伝言があるとすれば、雅史と楓の関係について以外にないため身構える。早く別れろという催促かもしれない。


「午後六時に第三病棟のエントランスで待っていてくださいとのことです」
「はい?」


想像したものと違ったため意表を突かれて声が裏返る。


「いいですね? 午後六時に第三病棟のエントランスです」


田所は繰り返した直後に、まるで体育の授業で習った、切れのいい〝回れ右〟の仕草で踵を返した。
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