エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
部屋に籠った雅史は、操作していたタブレットの電池が切れて初めて、資料のまとめに熱中していたことに気づいた。
ホテルに帰ってきたのが午後五時過ぎ。時計は十時近くを指していた。
ソファセットのそばにあるデスクチェアに座ったまま腕を回し、飲みかけのコーヒーに口をつける。
滞在している部屋は小さいとはいえリビングも擁するジュニアスイートのため、広々としたスペースがある。
部屋のチャイムが鳴ったのは、そこでストレッチでもしようと立ち上がったときだった。
(こんな時間にいったいなんの用事だ)
ホテルスタッフが訪問するような時間ではない。ドアスコープから覗くと、まさかの芹菜だった。
雅史にあそこまで言われたあとで顔を見せられる度胸は大したものだ。
またお酒でも飲もうという誘いかとうんざりしたが、無視するよりもきっぱり断ろうと「はい」とだけ返した。
「雅史さん、遅くにごめんなさい。鎮痛剤を持っていませんか? ちょっと頭痛がするんですけど、英語がわからないからフロントには聞けなくて……」