エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「白石さんは、どうして倉持先生を避けているんですか?」


お昼休憩に沙月の好きなプリンを買ってきたのに、素気ない態度で突き放していたのがずっと気になっていた。


「……え?」
「素敵な先生だって言ってましたよね?」


だとしたら、告白されてうれしいのではないか。
ふと沙月の表情に影が差す。


「私ね、結婚しなきゃいけない相手がいるの」


それは突然の打ち明け話だった。


「……どういうことですか?」
「家業の経営がうまくいってなくて……」


沙月の実家は老舗の呉服屋を営んでいるが、ここ数年右肩下がりの経営状況に歯止めが効かないという。ある企業の社長子息が沙月を気に入り、結婚を条件に融資を申し出ているのだとか。
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