エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
楓は雅史に言われた通り、ダンボールに荷物を詰めはじめ、引っ越しの準備を少しずつ進めている。昨日はマンションの管理会社へ連絡し、引っ越しの予定を告げた。
「だけど石川さん、いくらなんでも海老沢さんを差し置いて自分がついていくなんてね」
「それは院長指示なので」
芹菜の思惑ももちろんだが、決定権は院長にある。
「そうかもしれないけど、院内での仕事も十分じゃないのに婚約者ってだけでどうなのかなって思っちゃう」
沙月の言葉が胸に重くのしかかる。
(……病院内で雅史さんの婚約者は石川さんという認識なんだよね)
雅史からプロポーズされているため忘れてしまいがちだが、芹菜は院長公認だと改めて思い知らされる。
「そういえば」
沙月は否定的に話しているが、ふたりの話題はあまり耳にしたくないため、以前から気になっていることを聞こうと思いきる。