エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

その後、芳郎は「お父様によろしく」と告げ、もう少し休むからと日記を大事そうに抱えて部屋を出ていった。

リビングでふたりきりになると、雅史は楓の隣に移動しそっと引き寄せた。


「院長が私たちのこと認めてくださったって本当ですか?」


未だに信じられず確認せずにはいられない。
あれほど頑なに反対し、芹菜まで送り込んできたというのに。


「ああ。石川さんも、もう病院には来ない」
「……石川さんも? あきらめてくれたんですか?」


あの彼女があっさり引き下がるのも信じられない。
雅史が、楓と離れていたこの一週間の顛末をゆっくり話しはじめる。

芹菜がアメリカから送ってきたメールを雅史が発見し、それが発端となって彼女を慎一の目の前で排除したこと。その後、倒れた慎一が目覚めたときのやり取りなど、詳細に聞かされ、ふたりの未来が開けたのを目の当たりにする。

じわじわと実感が込み上げてくるが、ひとつだけどうしても確認したいことがあった。
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