エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
菜乃花の後ろから背の高い男性、朋久が顔を覗かせた。雅史と優劣をつけがたい容姿をしている。
「いらっしゃい」
「海老沢楓と申します」
続けざまに挨拶をしてから、ここへ来る途中に立ち寄ったパティスリーのケーキ箱を差し出した。
「わぁ! ミレーヌのスイーツですか!?」
菜乃花がぱぁっと顔を輝かせる。
「はい、たまにどうしても食べたくなるんです」
いつだったか、雅史が昼休憩に買ってきてくれたのがきっかけで、楓はすっかりそこの大ファンだ。
「私もそこのスイーツは大好きです。特にイチゴタルトが」
「わかります! あれ、おいしいですよね」
玄関先で意気投合。つい甘いもの談義に花を咲かせていると、「あがってもらったら?」と朋久が笑いながら促した。