エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

あれきり病院に来なくなった芹菜は、本人の希望でイギリスに留学したと風の噂で聞いた。傷心かと思いきや〝あっちで極上の男をゲットするんだから〟と息巻いていたらしく、楓は密かにほっとしている。彼女とはあまりいい終わり方ではなかったため、気がかりだったのだ。

楓たちを取り巻くすべての歯車がうまく回りはじめ、いいほうへと導かれている気がする。

雅史の友人が住む三階建ての低層マンションは、駅を中心におしゃれなショップやカフェ、レストランが数多くある街にあった。

セキュリティゲートを何度か抜けてインターフォンを押すと玄関のドアが開かれ、かわいらしい女性が顔を出した。


「雅史さん、いらっしゃい。はじめまして、菜乃花(なのか)です」


雅史に挨拶してから、楓のほうに笑顔を向ける。


「菜乃花ちゃん、どうも」
「はじめまして、海老沢楓です」


フレンドリーな挨拶をした雅史に続いて、楓も自己紹介する。
朋久と菜乃花も結婚したばかりの夫婦だと雅史から聞いている。日本最大手の弁護士事務所の後継者で、妻の菜乃花もそこで働いているらしい。
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