エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

クスッと笑われて、さらにカッコがつかない。


「海老沢さんが慌てるところ、初めて見たな」


いつも大人の女ぶった振る舞いをしてきたのは全部見せかけ。雅史への想いを悟られないための隠れ蓑だった。体じゅうにベールを纏い、好きな気持ちが彼から見えないように。


「すみません、ほんとに」


穴があったら入りたい。というか、今すぐここに穴を掘って身を隠したい。

肩を丸めて体を小さくし、雅史の視界が注がれる面積をなんとか狭くしようと躍起になる。そうしたって恥ずかしさが減るわけではないのがつらい。


「そろそろ行こう」
「……はい。ごちそうさまでした」


話を切り上げてもらえてホッとする。ナフキンで口元を拭って立ち上がった。
結局、仕事を辞める話もできず、大きな失態を犯して終わり。きっと呆れられただろう。

(なにやってるのかな、私)
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