エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

自己嫌悪に陥りながら雅史に続いてエレベーターに乗り込む。ほかにも一緒に乗った人がいたおかげでふたりきりにならず、気まずくならないのは助かった。

(でも、このあとはどのみち車でふたりきりになっちゃうんだよね……。電車で帰りますって言ったら失礼かな)

あまりにもひどい問題発言をしたため、どうにか車に乗らない手はないかと模索する。ところがエレベーターはノンストップで一階に到着し、名案が浮かぶ隙などない。

勢いで「神楽先生」と呼び止めたが、雅史は「ちょっとここにいて」と楓をロビーで待たせ、なぜかフロントへ足を向けた。

(えっ、まさか……!)

その行動の意味するものに心当たりはひとつしかない。ありえない速度で鼓動が打ちはじめる。

(ううん、違うでしょ。そんなわけないから)

きっとなにかべつの理由があるに違いない。

たとえば食事を終えたばかりのクールブロンの素晴らしさを伝えるためだとか、ホテルマンたちの接客サービスを称えるためだとか。
無理やりこじつけなければ、この状況を説明できない。
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