エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

ドアが開けられ、中に誘われる。
雅史にスイートルームなのか確認したくせに、それを目でたしかめる心の余裕はない。
扉が閉まり、オートロックの音がした瞬間、後ろから抱きすくめられた。


「――っ」


声は出せず、吸い込んだ息の音だけが唇の端から漏れる。心臓は限界まで早鐘を打ち、今にもショートしそう。

耳のそばに雅史の吐息がかかり、それだけで気が遠のきそうになる。その寸でのところで、雅史に体ごと振り向かされた。
指先で顎を持ち上げられ絡み合う視線を堪能するまでもなく、彼の唇がゆっくり動く。


「楓」


そっと名前を呼ばれ、ドクンと鼓動が弾んだ次の瞬間、唇が塞がれた。

ふたりの関係をゆっくり築く隙もない。そもそも今夜限りのふたりには、関係構築もなにもないのだけれど。

やわらかな感触をたしかめるように啄みながら、雅史が楓の腰を引き寄せる。逞しい彼の腕に包み込まれ、行き場を失った手を恐る恐る彼の背中に回した。
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