エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

*****

楓が、院長に呼ばれた雅史を見送ってすぐ、再びドアがノックされた。彼ならノックはしないから、べつの人間だ。
返事をしつつ立ち上がってドアを開ける。


「海老沢さん、おはよう」


脳神経外科の看護師長、沙月だった。


「おはようございます。神楽先生でしたら今不在ですが」
「もしかして院長に呼ばれた?」
「どうしてそれを?」


まるでこの場で見ていたみたいだ。


「たぶん結婚の話じゃないかな」
「……結婚?」


聞き返した楓に沙月が頷く。たった二文字の言葉が、楓の心に刃を突き立てた。


「じつは昨日、友人と食事していたレストランで院長が石川(いしかわ)製薬の社長と会っているのを見かけてね」
< 63 / 322 >

この作品をシェア

pagetop