エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
石川製薬は医療用薬品を扱う企業としてはトップクラス。日本有数の製薬会社で、神楽総合病院でも多くの取引がある。
お互いの息子と娘の結婚話をはじめた彼らの会話に、偶然にも近くのテーブルにいた沙月は友人そっちのけで耳を傾けていたらしい。
「院長は私にも気づかないくらい乗り気で話していたから、早速神楽先生にその話があるんじゃないかなって思って」
秘書の田所がここに来るのを見かけ、きっと院長に呼ばれたに違いないと推測したのだろう。
「そう、だったんですね……」
雅史は縁談が持ち上がってもおかしくない次期院長の立場。昨夜の出来事は、楓にとって望まないお見合い前の記念のようなもの。彼はただ、楓の願いを叶えてくれただけ。
頭では割りきっているのに、現実を突きつけられて心が大きく乱される。
「海老沢さん、どうかした?」
呆然としていたが、沙月に顔を覗き込まれて我に返った。