エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「やっぱりうちに海老沢コーヒーマシンを置こうと思うけど、どこに掛け合えばいい?」
「無料レンタルのキャンペーンは残念ながら終わってしまいましたので」
「それじゃ、いくらだ? いくら払えばそのマシーンを置ける?」
雅史はデスクに両肘をついて手を組んだ。楓に向かって身を乗り出す格好だ。
まるで楓を手に入れたいと言われているみたいで胸がざわつく。
(今のは単なるジョークなんだから)
心を揺らすなと自分を制す。そこに好意があるはずはないのに、昨夜の過ちのせいで自分に都合よく捉えてしまうからかなわない。
「……ご相談には応じかねます」
きっぱりとした口調で返したが、目は逸らした。
「どうして」
冗談めかした切り返しが見つけられず、目線を外したまま泳がせる。いつものように接しようとするのに空回りだ。
困っている楓を助けるかのごとく、デスクの上にある固定電話が内線の着信を知らせて音を立てる。