エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
午前中の診察と昼休憩を終えた雅史が部屋に戻ったのは、午後二時を過ぎた頃だった。白衣を着たまま、深く息を吐きつつ椅子に深く腰を下ろす。今日はこのあと来客が一件入っている。
「診察お疲れ様でした」
労いのコーヒーを彼のデスクに置く。
「ありがとう。この一杯を楽しみに診察を終えてきた」
「そうだと思って、とびきりおいしくお淹れしました」
いつものように切り返す。
ふたりの間にはなにも起こっていない。昨夜の出来事は楓の胸の奥底にしまい込み、二度と出てこられないように厳重に鍵を掛けた。
父親の決めた相手との結婚が待っている楓にとって、そうするのが一番。大切な思い出として、永久にそこで眠らせる。
「それはうれしいね」
雅史は早速口をつけ、飲み込んだあとに深く大きく息を吐き出した。いかにもおいしいといった様子だ。