エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

院内の女性人気を集める先生だけに、それを見越した医事課のマネジャーから『くれぐれも神楽先生に上司以上の感情は持たないようにしてください』と異動前に厳重注意されていたため必死に心をガードしていたが、雅史の魅力を前にして撃沈してしまった。

しかし注意事項も守れない人間と思われたくないため、まったく興味ありませんという雰囲気を醸し出し、想いを封印して仕事に励んでいる。

患者のみならず女性たちのうっとりした熱い視線をひとり占めする彼だから、そばにいる楓には嫉妬交じりの視線が遠慮なく飛んでくるため、そういった姿勢は外野への自己防衛にも有効だ。


「海老沢さんは大丈夫? 先生に心揺れたりしない?」
「今は仕事で手一杯です」


ヒヤヒヤしながら答える。


「それに、たとえ熱を上げたとしても、私では相手にされませんから」


患者の信頼も厚く、素晴らしい医師である雅史のお眼鏡にかなうわけがない。彼ならよりどりみどりだろう。
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