エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

通用口でのやり取りだけで確証は掴めなかっただろうが、都合の悪い芽は早く摘むに限るといったところか。


「ともかく私のほうは石川製薬との話を進めておきます」
「院長!」
「話は以上です」


慎一が雅史を遮ったタイミングで部屋のドアが開く。一度ならず二度までも、まるで聞いていたかのように秘書の田所が現れた。


「神楽先生、こちらへよろしいでしょうか」


部屋を出るように催促する。静かな声なのに拒絶をいっさい許さない強さを秘めていた。

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